先に結論

売ると決めた後は、基本的に仲介か買取の二択

「売る・貸す・住む・保有する」は、家を今後どう使うかの選択肢です。すでに売却すると決めている人が実際に選ぶのは、主に仲介で一般の買主を探すか、不動産会社等に買い取ってもらうかです。

ただし、いきなり査定額だけを比べるのはおすすめしません。先に確認する順番は、次のとおりです。

  1. 誰の名義か、誰が契約できるか相続人と登記の状況、所有者本人の判断能力を確認する
  2. 家財をどこまで残せるか処分費を払う前に、仲介・買取それぞれの引渡し条件を聞く
  3. 仲介で売れる条件か立地、建物状態、接道、需要、売却期限を確認する
  4. 仲介と買取を比較する提示価格だけでなく、期間・手間・契約条件まで比べる

最初の迷い1:家の名義はどうすればいいか

相続した不動産を売却するには、まず「現在の登記名義」「相続人」「誰がその不動産を取得するか」を整理します。法務省によると、2024年4月1日から相続登記が義務化され、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の申請が原則です。また、相続人申告登記だけでは売却できず、売却時には相続登記が必要と案内されています。

誰が相続するか決まっていない、相続人が多い、遺産分割でもめているなどの場合は、不動産会社だけで完結しません。登記は司法書士、紛争性がある場合は弁護士、税務判断は税理士というように、内容ごとに相談先を分けます。

最初の迷い2:家財道具はどうすればいいか

査定前に全部捨てる必要はありません。先に片付けると、処分費を負担した後で「買取なら残したままでも相談できた」と分かることがあります。

仲介では、内見時の印象や引渡し条件から片付けが必要になることが多い一方、買取では家財を残した状態で相談できる場合があります。ただし、どこまで残せるか、処分費が価格から差し引かれるかは会社と物件ごとに異なります。

まず室内の写真を撮り、「この状態で仲介できるか」「買取ならどこまで残せるか」「撤去費は誰が負担するか」を同時に聞く方が、無駄な先行支出を避けやすくなります。

最初の迷い3:そもそも価値があるのか、売れるのか

古い、荷物が多い、地方にあるという理由だけで、売れないと決めつけることはできません。反対に、査定額が出たから必ずその金額で売れるとも限りません。

仲介査定は「一般の買主へ、どの程度の期間・条件で売れそうか」という予測です。買取価格は「事業者が改修・再販・保有のリスクを負ったうえで、いくらなら直接買えるか」という金額です。数字の意味が違うため、単純に高い方だけを採用しないことが重要です。

比較項目仲介買取
買主主に一般の購入希望者不動産会社・専門事業者
価格の考え方市場で高く売れる可能性を探る再販費用や事業リスクを織り込む
期間買主が見つかるまで確定しない条件が合えば日程を決めやすい
家財・修繕内見や引渡しに向けた対応が必要になりやすい現状のまま相談できる場合がある
向きやすい人期限より価格の可能性を優先したい期限・手間・確実性を優先したい

結局のところ、「売りたいから売る」という目的は同じです。違うのは、価格の上振れを待つのか、期限と条件を固めるのかという優先順位です。

判断が遅れて負担が増えた3つの実例

以下は、運営者が不動産実務で扱った相談・案件を、個人や物件を特定できない形に一般化したものです。すべての物件に同じ結果が起きるという意味ではありません。

CASE 01

判断を保留している間に、天災で物件状態が変わった

売るか保有するかを決めきれない間も、建物は同じ状態で待ってくれるとは限りません。実際に、判断を先送りしている期間中に天災地変が起き、当初とは異なる物件状態・売却条件になったケースがありました。

実務上の教訓:すぐ売らない場合も、火災保険、雨漏り、戸締まり、庭木、近隣への影響など「保有中の管理」を止めないこと。保留も一つの判断ですが、無管理とは分ける必要があります。

CASE 02

相続前に所有者の認知症が進み、売却手続が重くなった

家族が将来の売却を考えている間に、所有者本人の認知症が進行。本人だけで契約を進めることが難しくなり、成年後見制度を含む法的な手続の検討が必要になったケースです。

実務上の教訓:「いずれ相続する家だから、家族が代わりに売れる」というものではありません。所有者本人が存命なら、本人の財産です。判断能力に不安が出てから慌てるのではなく、元気なうちに本人の希望と管理方針を話しておく必要があります。

CASE 03

買取を選ばず仲介を続け、最終価格が当初の買取提示額を下回った

当初は仲介なら買取より高く売れる可能性があると考え、買取を選ばなかったものの、売却が長期化。最終的に成立した価格が、初期に提示されていた買取金額を下回ったケースです。

実務上の教訓:仲介の査定額は成約保証ではありません。仲介を選ぶなら、「いつまでに決まらなければ価格を見直すか」「どの時点で買取へ切り替えるか」を開始時に決めておくべきです。

相談前に最低限まとめるもの

  • 登記事項証明書や固定資産税の通知書など、物件を特定できる資料
  • 亡くなった方と相続人の関係、遺産分割の状況
  • 室内・外観・接道・傷み・家財量が分かる写真
  • 売却希望時期と、「価格・期限・手間」の優先順位
  • 仲介を続ける期限と、買取へ切り替える基準

よくある質問

相続登記をしないまま売却できますか?

法務省は、相続した不動産を売却する場合には相続登記が必要と案内しています。相続人や遺産分割の状況で必要書類・手続が変わるため、法務局または司法書士へ確認してください。

家財は査定前に処分すべきですか?

全部を先に処分する必要はありません。仲介・買取それぞれについて、現在の状態で相談できるか、撤去費を誰が負担するか確認してから判断します。

仲介なら必ず買取より高く売れますか?

必ずではありません。仲介には高く売れる可能性がある一方、買主が見つからず、期間や条件を見直すこともあります。査定額ではなく、期限と最終的な手取りまで比較してください。

認知症の親名義の家を、子が代わりに売れますか?

家族という理由だけで当然に売却できるわけではありません。本人の判断能力や既存の契約、成年後見制度の利用状況などで対応が変わるため、司法書士・弁護士等へ個別に相談してください。

まとめ

相続した家を売るなら、最終的な方法は主に仲介か買取です。しかし、その前に名義、契約できる人、家財、期限を整理しなければ、査定額だけを比べても判断できません。

仲介には価格の可能性があり、買取には期限と条件を固めやすい利点があります。どちらが正解かではなく、自分が何を優先し、いつ見直すかまで先に決めることが重要です。

公的資料・出典

公的資料は2026年8月19日に確認。法律・登記・税務の記述は一般的な情報であり、個別相談への回答ではありません。